コラム

せっかくのネーミング「変な意味」になっていませんか?

 「ラテン語 社名 由来」などで検索すると、少なからぬ企業がヒットします。個人的にはラテン語を由来とした社名を付けている企業は古典への素養や敬意が感じられて好感が持てるのですが、文法や使われている単語の概念を知っていると、首をかしげてしまう名前になっている企業があることも事実です。「普通はそんなこと分からないんだから良いだろう」と言われてしまえばそうかもしれませんが、せっかくラテン語を使うなら正しく使ってくれれば・・・と思わずにいられません。

自分が知らない言葉にも、必ず本来の「意味」がある

 社名ではなく、とある大きなレストランの事例ですが、壁一面に何語なのかよく分からない文章が書かれていました。アラビア言語で書かれた著作か何かを、何故かアルファベット表記にしたものだそうです。会場の責任者にどんなことが書かれているのか聞いてみたのですが、その方も分からないとのことでした。往年の結婚式で定番曲だったエルガーの『威風堂々』が実は結婚式に使うことがためらわれるストーリーであるように、壁の文章が実は食事の場にはそぐわない文章である可能性はないでしょうか? もしアラビア語を理解する方が来たら、気分を損ねてしまうのでは?

ラテン語に由来する社名の事例

 ラテン語由来の社名に戻るなら、もちろん正しく、うまく使っている企業もあります。メルカリ mercariは、「(私は)商いするmercor」という能相欠如動詞の不定詞形で正しく「商いすること」ですし、ベネッセ bene esseは「良く、正しくbene」という副詞と「(私は)ある、存在するsum」の不定詞形「あること、存在することesse」を組み合わせた語呂も意味も良い社名だと思います。

名前とは「理念を示す大切なもの」

 これらの企業がたまたまラテン語の知識を持った人がいて、正しい用法のもとで社名を付けることが出来たのか、あるいは研究者に助言を仰いだのかは分かりませんが、名前は理念を示す大切なものだと思いますので、用法や意味、語源などを正しく踏まえた名前の企業が増えてくれればと願わずにはいられません。

 お近くに研究者や専門家がいない場合、QeSへのご依頼もご一考いただければ幸いです。

2020年6月11日コラム,スタッフコラム

Posted by 村上 寛 Hiroshi Murakami


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